【一級建築士製図】合格したいなら作図練習をやめよう!
「描く」より「読む」が合否を分ける
「とにかく課題をこなせば受かる」「作図スピードを上げれば時間が余る」「記述はテンプレートを暗記すればいい」
こんな学習法を信じて、作図練習に追われる日々を送っていないかな?
実はこの3つ、合格を遠ざける「マイナス学習」なんだ。
合格を遠ざける3つのマイナス学習と、それに代わる本質的な対策を整理します。
この3つを手放した先に、「読む力」が身につきます。
作図練習を繰り返しても成長につながらない理由
まず手放すべき1つ目のマイナス学習は、「作図練習の量をこなす学習」です。
おそらく、多くの受験生が次のような指導を受けてきたのではないでしょうか。
- 課題をたくさんこなしながら知識をつけよう
- 図面は一週間に最低2〜3枚は描こう
- 勉強時間は最低でも何百時間は必要
確かに、この根性系の学習で合格された方もいます。ただ、これは受験生全員に共通する学習法ではありません。
実際に量をこなす学習を続けた結果、多くの受験生はこうなります。
- 毎週課題に追われて、復習すらできない
- 構造や設備計画など、設計の知識を学ぶ時間がない
- モチベーションが続かず、疲弊してしまう
もちろん、何度か課題をこなしていると、たまにエスキスがスムーズに行くこともあるかもしれません。しかし、それは一時的なもので、次の課題になると途端に解けないという方がほとんどです。
何十枚、何百枚と図面を描き続けた先のゴール地点は何でしょうか。
- 「今まで合格した受験生もそうしてきたから」
- 「課題を信じてやれば受かるから」
学習に対する目的やゴール地点が曖昧な時点で、根拠のない学習です。これは成長に繋がる本質的な対策ではありません。
毎週1課題で作図に2〜3時間、月に換算すると最大12時間も作図だけに費やしている計算になるんだ。はじめて製図試験を受けた方でも、約2ヶ月半で図面はある程度描けるようになったはず。その時間を設計の知識を構築する時間に回さないのは、本当にもったいないよ。
「時短学習」が合格に直結しない理由
2つ目に手放すべきマイナス学習は、「時短学習」です。
時短学習とは、作図スピードを上げて試験時間の短縮を図ることを目標にした学習のこと。これを「本試験に直結する効率の良い学習」と勘違いしている方が多くいます。
時短学習の考え方
この試験の流れは以下の通りです。
時短学習の発想はこうです。
- 作図2時間半 → 30分短縮して2時間で描く → エスキスの時間が増える
- 問題の読み取りも15分でサクッと終わらせる → さらにエスキスの時間が増える
- エスキスの時間が増えたことで何とか乗り切ろう
一見合理的に思えますが、これは合格に直結する対策にはなりません。
この試験は問題の読み取りからスタートするよね。ここで読み落としや条件の整理ミスがあると、その後のエスキス・記述・作図、すべての工程が崩れてしまうんだ。作図時間を短縮しても、スタート地点でつまずいていたら意味がないよ。
作図スピードは評価対象に入らない
ここで冷静に考えてほしいことがあります。
製図試験は「作図スピード」を一切評価しません。それは受験生側の都合です。試験元が評価するのは、図面と記述の「結果」だけです。
試験元が見ているのは、提出された図面と記述の「結果」だけ。どれだけ早く描いたかは一切関係ないんだ。作図スピードを上げても、計画の精度が伴っていなければ全てが無駄に終わるということを忘れないでね。
時短学習を軸にした対策を続けると、「エスキスがまとまらない」という根本課題をクリアできない状態に陥ります。
図面のトレースや課題の消化では、設計の基礎力は身につきません。作図練習や課題の消化に追われて疲弊し、モチベーションが下がってしまう方がほとんどです。
合格の鍵は「読む力」にある
では、時短でも量でもなく、何を目標に学習を進めればいいのか。
それは、「読む力」を身につけることです。
問題を読む力 ― 構成理解が読み落としを防ぐ
この試験のスタート地点は、問題の読み取りです。ここでこけると後の工程が全て崩れます。
しかし多くの対策は、試験後半の作図ばかりにウエイトを置いて、「問題の読み取り」を重要視していません。むしろ「問題の読み取りもサクッと済ませてエスキスの時間を増やした方がいい」という間違った考え方が広がっています。
一般的な指導では「問題を上から順番に読んで、3色のマーキングで大事なところに線を引く」など、構成を理解する前に手順ばかり教えられます。
なぜその順番で読めばいいのか。問題の構成や読み取りの根拠を教えられたことはありますか?
問題を読解するために必要なのは、問題の構成を理解することです。
| 章 | 目次 |
|---|---|
| I. 設計条件 | 1. 冒頭(計画の目的) |
| 2. 敷地及び周辺条件 | |
| 3. 建築物(要求室等) | |
| 4. その他の施設等 | |
| 5. 留意事項 | |
| II. 要求図書 | 1. 要求図面 |
| 2. 面積表 | |
| 3. 計画の要点等 |
この構成はどの年代の問題でも同じなんだ。それぞれの目次に何が書かれているかを理解するだけで、「どこに」「何が」書いてあるかが分かるようになる。つまり、読み落としを防ぐことに直結するよ。
条件整理ができれば、エスキスはまとまるようになる。その一貫した設計の流れを作るために、まずは問題の構成を理解し、分析するところから始めてください。
図面を読む力 ― 標準解答例を分析できるか
もう一つの「読む力」は、標準解答例の図面を分析できる力です。
標準解答例には、必ず試験元が考えた計画の意図が組み込まれています。
- なぜ、このアプローチ計画なのか
- なぜ、このゾーニング計画なのか
- なぜ、この位置にPSを計画しているのか
何かしらの理由を持って試験元は図面を作成しています。その意図を汲み取れるかどうかが、製図試験攻略の鍵です。
しかし、一般的な指導では読むことより描くことが中心です。トレースや作図スピードばかりが注目され、計画の理解が不足したまま時間だけが過ぎていきます。
分からない英語のスペルを「見て、書く」ことはできても、意味を理解しなければ会話では使えません。図面も同じです。作図練習でただ真似して描くだけでは、設計力は一切身につきません。
作図スピードがある程度ついている状況なら、そこにさらに時間を当てる理由はありません。それよりも建築基準法、建築・構造・設備の各計画の理論を学ぶ時間を費やした方が、確実に課題公表後の過ごし方が変わります。
暗記学習にも大きな落とし穴がある
3つ目のマイナス学習は「暗記学習」です。特に記述のテンプレートを丸暗記する学習法が該当します。
暗記学習には2つの致命的な問題があります。
ズレが生じる
忘れてしまう
暗記したテンプレートに頼った記述は、問題ごとに変わる条件に対応できません。結果として、施主である試験元の要望を無視した設計者と判断されてしまいます。
また、長期対策を進めるうえで暗記に頼った学習は必ず手戻りが発生します。本試験直前に一から覚え直す非効率なサイクルに陥ります。
学習の効率化とは、暗記学習ではなく根拠を持って確かな知識を身につけることです。理屈を理解していれば記憶は定着し、少ない学習時間でも合格に近づけます。
暗記が苦手でも大丈夫。理屈を理解していれば自然と頭に残るから、少ない学習時間でも着実に力がつくよ。「なぜそうなるのか」を考える癖をつけることが、合格への近道なんだ。
暗記学習の危険性と、それに代わる「設計思考」による記述学習については、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ ― 3つのマイナス学習を手放す
| マイナス学習 | 本質的な対策 |
|---|---|
| ①作図練習の量をこなす学習 | ゴールなき根性学習をやめ → 学習の「質」を整える |
| ②時短学習 | 作図スピードに頼らず → 「読む力」で設計力を身につける |
| ③暗記学習 | テンプレ暗記を捨て → 根拠と理論に基づく理解 |
闇雲に作図練習を繰り返し、図面を描き続けても、課題に関する応用的な知識しか得ることはできません。「設計」とは何なのか。その在り方を見つめ直すところから始める必要があります。
正しい方向で学習を続けるために
建築技術教育普及センターが公表する標準解答例や過去の出題傾向を見れば、製図試験対策で最も大切なのは根拠をもって設計を行うことだと分かります。
感覚や経験則、広がっている固定概念が本当に正しい設計の考え方なのか。常に疑問を持ちながら、納得できるものを確実に吸収する。誰かが言っているからそのまま鵜呑みにするのではなく、設計にはすべて根拠があります。
試験元がどのような意図で問題を制作し、受験生に何を求めているのか。その出題傾向の根本的なルールを知るところからスタートしなければ、何も対策は打てないんだ。正しい勝ち方・戦略を知ること。これが合格への最短ルートだよ。
今はまだできなくても、正しい方向で学習を継続すれば、着実に力はつきます。実際に、毎週課題を解き続けても2年連続で不合格だった受験生が、「読む力」に学習の軸を切り替えたことで、翌年の本試験を一発で突破した例もあります。量をこなすことが正解ではなく、学習の方向を変えるだけで結果は変わるのです。
