【一級建築士製図】実は、99%が勘違い!?
図面チェック法の極意は問題のココを見よ!
図面を描き終わった後のチェック、何を基準にやっているかな?
学校で配られたチェック表や、ネットで見つけたリストを暗記して上から順に確認していく、というやり方が一般的だよね。
でも実はそのやり方、試験元が本当に求めている図面とズレている可能性があるんだ。
「要求図面」こそが最強の図面チェック表である理由と、特に重要な3つのチェックポイントを深掘りしていきます。
よくある「図面チェック」の落とし穴
一般的に、図面を描き終えた後のチェック方法として以下のようなやり方が主流です。
- 学校や講座で配られたチェック表を上から順にひたすら確認
- ネットで見つけたチェックリストを暗記して使う
- 「とにかく書き込めば安心」と補足文字を追加しまくる
もちろん、チェック表を使うこと自体が悪いわけではありません。問題は、そのチェック表が「試験元が本当に求めている図面表現」と一致しているかどうかです。
チェック表を暗記して試験に臨む受験生が多いんだけど、それだと出題の文言が少し変わっただけで対応できなくなるんだ。毎年チェック表を更新し続ける学習は、本質とはかけ離れているよ。
本試験の会場には、いつも使っているチェック表を持ち込むことはできません。暗記して臨むということは、「試験元の指示」ではなく「自分の記憶」を基準にチェックしていることになります。
オリジナルのチェック表が、試験元が求める図面表現とマッチしていなければ、そもそも意味がないのです。
では、何を見てチェックすればいいのか。その答えは、あなたの目の前にあります。
問題用紙の「要求図面」=最強の図面チェック表
製図試験の問題文は、大きく2つの章で構成されています。
| 章 | 主な内容 |
|---|---|
| I. 設計条件 | 冒頭 / 敷地及び周辺条件 / 建築物 / その他の施設等 / 留意事項 / 要求室等 |
| II. 要求図書 | 要求図面 / 面積表 / 計画の要点等 |
この中で、図面チェック表として活用すべきは「II. 要求図書」の中の「要求図面」です。
これは言い換えると、「図面指示書」そのものです。
実際の設計の仕事でも、会社ごとに図面の描き方やルールが決まっていますよね。人によって描き方がバラバラな図面を仕上げると、統一性がなくなり、チェックの精度も落ちてしまいます。
製図試験の採点も同じです。図面表現のルールが統一化されていなければ、試験官によって見方が変わり、採点の公平さが失われてしまう。だからこそ試験元は「要求図面」で図面表現のルールを明示しているのです。
要求図面=図面指示書。この見方ができると、「何を描くべきか」が問題文から直接読み取れるようになるんだ。わざわざ別のチェック表を作る必要がなくなるよ。
要求図面の中身を1つ1つクリアすれば、合格の最低限の図面になります。
どの年代にも共通する「本質的な戦い方」は、問題文そのものの中にあるのです。
R5(令和5年)以降の重要な変更点
さらに、令和5年からは要求図面の冒頭に次の文言が追加されました。
「I. 設計条件の要求等を満足したことを明示した上で、他の表に示す事項を図示又は記入して図面を作成する」
これにより、チェックすべき範囲が2段階に拡大しています。
| チェック対象 | 内容 |
|---|---|
| 1. 図面指示書の表 | 各階平面図・断面図の具体的な指示事項 |
| 2. 設計条件 I 全体 | 特記事項内の面積条件(例:プレイルーム30m²)等の図面上の明示 |
つまり、図面指示書の表だけでなく、設計条件 I に記載されたすべての条件が図面上で確認できることが求められるようになったのです。
ここからは、要求図面の中でも特に重要な3つのチェックポイントを深掘りしていきます。
極意1:主要寸法は「スパン割り」だけではない
「主要寸法」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
一般的には「スパン割りの寸法」と捉えられていることが多いです。7m、8mといった柱間の距離を図面に記入すること。確かにそれは主要寸法の一部です。
しかし、「主要寸法=スパン割り」という理解は間違いです。
令和元年の括弧書きが教えてくれたこと
令和元年「美術館の分館」の要求図面では、「主要寸法」の後に次の括弧書きがありました。
(スパン割り及び床面積等の算出に必要な程度)
ここに明確に書かれています。主要寸法とは、スパン割りの寸法だけではなく、床面積等を算定するための根拠となる寸法も含まれているということです。
この括弧書き、令和5年から突然削除されたんだ。これは「もうわざわざ書かなくても、分かっていますよね?」という試験元からのメッセージだと考えているよ。文言の変化に気づけるかどうかも、問題を読み解く力なんだ。
主要寸法に含まれる5つの要素
主要寸法として図面に記入すべき寸法は、具体的に以下の5種類です。
| 種類 | 内容 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 1. 柱のスパン | 柱芯間距離(X方向・Y方向) | 構造計画の根拠、室面積の算定基礎 |
| 2. 建物外形 | 建物全体の外形寸法 | 各階床面積・建築面積の算定根拠 |
| 3. 境界線まで | 建物から敷地境界線までの距離 | 最小後退距離、道路斜線の検証 |
| 4. 庇等の出寸法 | 庇・バルコニーの突出寸法 | 建築面積への算入判定の根拠 |
| 5. 要求室内の空間 | 要求室の中にある面積指定の小空間の寸法 | 特記事項で求められた室面積の算定根拠 |
例えば、庇の寸法がなければ、それが1mなのか1.5mなのか分かりません。つまり、建築面積の算定根拠が示せないということになります。
製図試験ではマス目に沿って図面を描きますが、「マス目を数えれば寸法は分かるでしょ」という考え方は、設計者として施主に寸法を測らせているのと同じです。実際の仕事の図面にマス目はありません。寸法が記入されていない図面は「不親切な図面」であり、図面表現ランクIIに抵触する可能性が高くなります。
極意2:床面積の「算定根拠」を図面で示す
主要寸法が「床面積等の算定根拠」を示すためにあるなら、具体的にどの面積の根拠を示す必要があるのでしょうか。
答えは、次の4種類の床面積です。
- 建築面積(水平投影面積。庇の出寸法が影響)
- 各階床面積(延床面積算定の基礎)
- 要求室の床面積(面積表に記載する値の根拠)
- 特記事項に示されている室の床面積(R5以降の新要件)
最後の「特記事項に示されている室の床面積」は見落としがちなポイントです。具体的に見ていきましょう。
令和5年「図書館」の具体例
令和5年の出題では、要求室「児童開架スペース(300m²以上)」の特記事項に次の記載がありました。
- プレイルーム(約30m²)
- 乳幼児の一時託児室(約30m²)
つまり、要求室の中にさらに面積指定のある小空間が要求されている。
このとき、図面で示す必要があるのは次の2つです。
- 児童開架スペース全体(300m²以上)の面積が算定できる寸法
- プレイルーム(約30m²)と一時託児室(約30m²)それぞれの面積が算定できる寸法
標準解答例はどう表現しているか
令和5年の標準解答例 1 を見ると、児童開架スペースの床面積は合計347m²。その中にプレイルーム35m²、一時託児室35m²が計画されています。
注目すべきは、スパンから外れた位置に細かく寸法が記入されていることです。
| 記入箇所 | 寸法の例 | 目的 |
|---|---|---|
| 一時託児室・プレイルーム上部 | 3,000 / 2,000 / 5,000 | 各室の間口・奥行きを明示 → 面積算定根拠 |
| 西側風除室の左側 | 3,500 | 児童開架スペースの端部寸法 → 全体面積の算定根拠 |
これらの寸法がなければ、プレイルームが本当に30m²あるのか、児童開架スペースが300m²を超えているのか、図面上からは判断できないのです。
要求室の表は階層構造になっています。
例えば「児童開架スペース300m²以上」の中にプレイルーム30m²が含まれるということは、プレイルームを別途300m²に加算するのではなく、300m²の中に含まれているという意味です。
この階層構造を正しく読み取れるかどうかで、面積計画の精度は大きく変わります。
「何のために寸法を入れるのか」を常に考えることが大切だよ。根拠のある寸法記入は、図面の説得力を一段階上げてくれるんだ。
極意3:二方向避難の起点は「歩行距離が最も長い居室」
3つ目のチェックポイントは、法規に関わる二方向避難です。
二方向避難については、受験生から毎年のように不安の声が聞こえてきます。
- 「どこを起点にすればいいか分からない」
- 「1mズレているだけでランクIVになるのでは?」
- 「重複距離がアウトにならない位置を起点にしているけど正しい?」
特に最後の「重複距離を基準に起点を決める」という考え方は、広く浸透しているが間違った固定概念です。
避難ルートの基本を整理する
まず、避難が完了するまでのルートを整理しましょう。実はとてもシンプルです。
たったこれだけです。2階以上の図面では「居室 → 直通階段」への矢印を示し、敷地内通路として「出入口 → 道路」への矢印を描きます。
ここで大事なのは、このルートの起点となる「居室」の定義です。
「居室」とは、居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。
→ 廊下、便所、倉庫、機械室などは非居室であるため、避難の起点にはならない。
そして、要求図書には次のように書かれています。
「居室の最も遠い位置」
これは、居室から直通階段までの「歩行距離が一番長い位置」を起点にするということであり、重複距離が一番長い位置ではありません。
歩行距離と重複距離、どちらが本質か
ここで、次の2パターンを比べてみてください。
歩行距離 35m
歩行距離 40m
避難をするうえで、どちらの方が危険ですか?
答えは明白です。歩行距離40mのパターンBです。
歩行距離が長ければ長いほど、避難に時間がかかり、危険が伴います。重複距離は避難経路の「途中」の評価指標に過ぎません。大切なのは「安全に直通階段にたどり着くまでの歩行距離」なのです。
したがって、起点を決めるときは歩行距離が一番長い位置を選ぶ。それ以外のことを考える必要はありません。
図面で示すべき数値
起点が決まったら、図面上で示すべき歩行距離の数値は次の通りです。
- 二方向避難で分かれる矢印のうち、「近い方の階段」までの歩行距離を数値で示す
- それを踏まえた重複距離の数値も示す
- 過去問の標準解答例でも「近い方の階段の数値」を示していることが確認できる
「1mズレたらランクIV」は本当か?
受験生が最も不安に感じるのが、歩行距離の数値が少しでもズレると法令違反(ランクIV)になるのではないか、という点です。
結論から言うと、1mズレた程度で法令違反にはなりません。
実は令和5年「図書館」の標準解答例 1 の2階平面図では、歩行距離40.5mとなっていて、本来真っ直ぐ階段に向かう経路が正しいのに、わざと遠回りしているように見えるんだ。それくらい曖昧なものなんだよ。完璧な位置よりも、概ね居室の最も遠い位置を起点にすることが大切なんだ。
大切なのは、法令上の歩行距離制限(建築基準法施行令120条)を明らかに超えていないことです。概ね正しい位置を起点にし、近い方の階段の歩行距離と重複距離を示せば、採点に大きな影響はありません。
3つの極意まとめ
| 極意 | よくある誤解 | 正しい考え方 |
|---|---|---|
| 1. 主要寸法 | スパン割りだけ | 算定根拠を含む5種 |
| 2. 床面積 | 面積表が合えばOK | 小空間含め寸法で明示 |
| 3. 二方向避難 | 重複距離基準で起点 | 歩行距離基準で起点 |
これらはすべて、問題用紙の「要求図面」を正しく読み解けば分かることです。
学校のチェック表やネットの情報に頼るのではなく、試験元が発信している情報=問題文そのものを根拠にする。これが、どの年度にも通用する本質的な図面チェック法です。
感覚ではなく「根拠」で戦うために
製図試験対策で最も大切なのは、根拠をもって設計を行うことです。
感覚や経験則、広がっている固定概念が本当に正しい設計の考え方なのか。常に疑問を持ちながら、納得できるものを確実に吸収する。
誰かが言っているからそのまま鵜呑みにするのではなく、「自分ならどうやって学習を組み立てるか」を考える。設計にはすべて根拠があります。その根拠をもって、試験元に提案できる設計者になるために、日々の学習を積み重ねていきましょう。
今はまだできなくても、正しい方向で学習を継続すれば、着実に力はつきます。
実際に、設計業務の経験が全くない受験生が初受験で、本試験当日30分も余力を残して試験を終えた例もあります。正しい学習の土台があれば、経験の有無は関係ないのです。
